2025年3月5日水曜日

灰原哀について(5)

「どうして…どうしてお姉ちゃんを助けてくれなかったの? あなたほどの…あなたほどの推理力があれば、お姉ちゃんのことなんて簡単に見抜けたはずじゃない。なのに、どうして、どうしてよ…」

灰原哀初登場回の終盤でコナンに対する言葉。初登場回での灰原は、コナンに対しては様子見、お手並み拝見というところだった。コナンは、黒の組織が宮野明美(灰原哀=宮野志保の姉)を殺害するに至った事件に関わっていたが、結局、宮野明美を助けることはできなかった。このセリフの前の時点で灰原は、自分が宮野明美の妹であるという立場は明かしていなかった。そもそも自分のこの立場に気付くのはいつなのだろうかというところで、灰原はコナンの推理力を測ろうとしていたところもあると思う。そして、そもそも宮野明美を助けられなかったというところで、大した推理力は期待できないだろうと最初から思っていた。

そして、コナンと灰原はともに現場に居合わせた事件、コナンは最後には綺麗に解決して見せたが、途中まで解決に至らないコナンを灰原は「やっぱり大したことないわね」と思っていた節がある。コナンは、その予想を上回る、ある意味では裏切るような際立った推理力を発揮したのだ。

灰原は、「この程度の探偵なのだから、お姉ちゃんを助けられなかったのも仕方がない」という納得をしようとしていたと考えられる。そして最後に納得できかけた時に事態が覆ってしまったのだ。コナンは驚くべき推理力を発揮し、灰原は驚嘆した。それと同時に、ではなぜ姉は救われなかったという不条理に悔しさを感じた。

灰原哀(宮野志保)は科学者である。普段の言動からは、物事の大体の状況については明快に理解して説明ができるという自信が感じられる。「ま、そんなところね」なんて言い方をよく使う。灰原哀にとって、世の中のほとんどの出来事は「そんなところね」と言えば済むような話なのだ。コナンが初登場回で最後に事件を解決できていなかったら、灰原哀は姉の死も「ま、そんなところね」と思ってなんとか呑み込もうとしたのだろう。

だから灰原哀は、その予期を上回る江戸川コナン(工藤新一)の推理力の高さに驚嘆したし、彼が関わりながらもなお姉が救われなかったという事実に打ちひしがれた。説明・理解できない現実に対しては、「ま、そんなところね」とは納得できず、驚嘆し、悲しむしかなかったのだ。

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